玉掛けとは?何のためにどうやって行われる作業か

工場でたくさんの荷物、資材などを運ぶとき、人の手では難しいこともあります。ましてや、高所にこれらの物体を移すのであれば、人力だとほぼ不可能でしょう。そこで、クレーンを使って物体を持ち上げ、必要な場所にまで移します。

このとき、クレーンのフックに物体を引っかける作業を「玉掛け」と呼ぶのです。


玉掛けは単純なようでいて、安全に工場業務を行うためには手抜きできないプロセスです。もしも適当に玉掛けを行うと、大事故につながりかねません。そこで、玉掛けをできるのは有資格者だけに限られています。


玉掛けではフックを用いたり、つり荷にワイヤーをかけたりと、さまざまな手法が実施されています。それぞれ適した荷物があるので、的確に判断して玉掛けをしなければなりません。また、玉掛けの道具もクランプ、ハッカー、つりビームなどいろいろです。作業者はこれらの道具の特徴をしっかり踏まえたうえで、そのときどきで最適の選択を下すこととなります。

 


なぜ注目されている?玉掛けの資格を取得するメリット

最大のメリットは「就職先の幅が広がる」ことでしょう。

玉掛けは工場のみならず、造船所や倉庫、建設現場などでも発生する作業です。そして、そのすべてに有資格者がいなくてはなりません。企業の求人を見てみると、「玉掛けの資格者歓迎」といった項目が記載されていることもあります。応募できる求人数が増え、自分の可能性をいろいろな分野で試せるようになるでしょう。

また、専門的な技能を有している分、就職後の給料、賞与に影響することもありえます。

 

そのほか、玉掛けの資格はクレーン免許、デリック免許などと並び、現場で重宝されています。すなわち、企業はこれらの資格、免許を持っている人材を手放したくないと考えるのです。最初は派遣やアルバイトで就職したとしても、企業から正社員登用を打診されることもあるでしょう。より安定した就業条件を得るために、玉掛けの資格は役立ちます。「業界内でのキャリアアップ」も、玉掛けの資格を取得する大きなメリットだといえるでしょう。



どうすれば取得できる?資格を手に入れるまでの流れ


玉掛けの資格は、正式名称を「玉掛作業者資格」といいます。労働安全衛生法第61条によって規定されている、まぎれもない国家資格のひとつです。


資格を取得するにあたって、受講者は玉掛け技能講習か特別教育、いずれかを選びます。これらの講習は都道府県労働局長登録教習機関で実施されています。


玉掛け技能講習は、いわば基本的な作業内容について学ぶ時間です。学科と実技、合わせて20時間の講習が義務付けられています。ただ、クレーン免許やデリック免許など、ほかの技能資格を持っている場合は、一部の講習が免除されることもあります。学科と実技、それぞれに修了試験が用意されており、両方に合格すれば資格取得です。


一方、つり上げ荷重1トン未満のクレーン、移動式クレーンかデリック、揚貨装置をともなう玉掛け作業を行うのであれば、特別教育を受けなくてはなりません。特別教育は一部の企業の事業所、専門の教習所でも実施されています。特別教育も学科と実技で構成されています。合計時間は9時間で、修了後に証明書が発行され、資格を認められる仕組みです。

 


誰でも受講できる?それぞれの受講資格と難易度について

玉掛けの資格は、18歳以上なら誰でも受講できます。ほかの資格が必要だったり、現場経験を求められたりするわけではありません。


ただし、決して講習時間は短くないため、できるだけ早い段階で取得しておくと良いでしょう。職場でのキャリアを積み、仕事が忙しくなってしまうと講習に通いにくくなってしまいます。

そして、玉掛けの資格は、難易度がそれほど高くないことでも有名です。教官の話をよく聞き、全部の項目を真面目に勉強すれば合格は容易といえるでしょう。


ただ、よくある失敗が、実技の際に緊張しすぎるパターンです。慣れない作業を「合格しなければ」というプレッシャーの中で行うのは精神的につらいものです。教官の指導が厳しくて、余計に焦ってしまうこともあるでしょう。

しかし、どのような精神状態でも、確実に作業をこなせるくらいにならなければ、現場では通用しにくいともいえます。講習期間を通して、玉掛けに必要な技能だけでなく、責任感も養うことが大事です。